2007年5月5日(土)
ヘブロン、ユダヤ人入植者たちの自己正当化
日本の例に限らず、加害者が、その批判を避けるために使う常套手段は、自分を「被害者」にすり替えることだ。ユダヤ人入植者たちにインタビューするとき、その典型的な例を目の当たりにする。
ヘブロン市内に数百人のユダヤ人入植者が居座るH2地区(イスラエル側が管理する)で暮すパレスチナ人住民は、入植者たちの嫌がらせや暴行、襲撃のために通常の生活ができなくなり、その通りの家々は、シャッターを閉じたままで、2階のベランダも入植者の投石を避けるために金網で囲まれている。通りにはほとんど人影がない。“死の街”だ。入植地の近くのパレスチナ人の家々には、さまざまなゴミや大型廃棄物が投げ込まれる。外に出ると、投石される。しかしイスラエル軍もイスラエル警察も、それを制止することはない。
それでも、入植地のスポークスマン、デービッド・ウィルダー氏は、自分たちは多数のパレスチナ人住民に囲まれ命を狙われ続ける「被害者なのだ」と主張する。
「(我われがここにいることに反対する連中は、)ユダヤ人がヘブロンに住むことの重要性が理解できていない。また誰がここに住んでいるのかということもわかっていない。アラブ人がヘブロンに住んでいるのは、ただ私を殺すためなのです。我われがユダヤ人だからです。アラブ人は我われが誰かなど関係ないんです。今ではヘブロンのアラブ側へは行くこともできない。今はパレスチナ自治政府の管理下にあるから。もし独りでそこへ行ったら、頭を叩き割られる。そして馬のしっぽに首をつられる」
「ヘブロンの80%からイスラエル軍は撤退し、そこはテロリストの巣となっている。テロ攻撃を計画し、それを実行している。ここではなく、エルサレムやテルアビブなど他の地域で実行するためです。自爆テロをやる人間たちの多くはヘブロンからです。ジェニンも同様に、テロリストの巣になっている。それを排除するためにイスラエル兵を失ってしまうことを恐れて、イスラエル当局はこれを放置している。パレスチナ自治政府の好きなようにさせている」
一方、元兵士たちのグループ「Breaking the Silence(沈黙を破る)」に対する見方も辛らつだ。
「このグループを率いている男は、戦争犯罪を犯している。たぶん病気だからだろう。戦争犯罪を犯した者は裁判にかけられるべきで、投獄されるべきだ。もし犯罪を犯していないのなら、なぜそういうことを言うのか。
彼らのことを語るのに、2つのことを区別しなければならない。1つは彼らの政治的なイデオロギー。これは完全に間違っている。しかし何を言おうと合法だ。彼らがやっていることは、兵士としてイスラエル人を代表する者が、自分が兵役で取得した情報を政治的に利用しようとしている。他のイスラエル人、我われのようなヘブロンの住民を抑圧するためにです。他のほとんどの国で、兵士がそのようなことをしたら、裏切り者とみなされるだろう。兵役で得た情報を政治的に利用しようとしているのですから。裏切り者として投獄されるだろう」「彼がやっていることは多くのレベルにおいてとても危険です。まず我われにとって危険です。彼らの言動が、パレスチナ人の我われに対する攻撃を触発しています。彼らは『ユダヤ人はこのヘブロンにいるべきではない』と言っている。そして彼らの我われに対する暴力を正当化している。直接には『あそこへ行って、ユダヤ人を殺せ』とは言わないが、彼自身は宗教的なユダヤ人としてヘブロンで兵役につき、そしてこのユダヤ人社会について嘘をつく。これがここでアラブ人が我われに敵対するのを助長している。これはとても我われにとって危険です。イスラエル国家にとってもです」
「私には彼の動機がわからない。ジャーナリストのあなたが、その活動資金がどこから来ているのか尋ねてみればいい。どこから金を得ているのか。彼らの活動にはたくさんの金が必要です。例えば、彼らがEUから資金援助を得ていると知っても私は驚かない。ペレス平和センターから得ているとしてもです。ヘブロンでの活動を彼自身のキャリアにしようとしている。私はそれが影響力があるとは思えないが、それはとても危険なことです」
(Q・エフダがこのような活動をしているのは金のため?)
「間違いない。今、彼はたくさんの金を稼いでいる。海外から寄金を得ている。それの証拠を持っているわけでもなく、その資料があるわけではないが。しかし彼がやっていることはイスラエルのモラルを破壊することです。彼はイスラエル人にとって危険な存在です。彼の活動でイスラエル人が負傷し、殺される可能性だってある。彼や彼の行動を見たときの感情は、もう十分という感じです。他の国なら裏切り者として裁判にかけられるだろう。しかし、彼は道徳的、またモラルの上で問題を抱えていると思う。彼の言っていること、やっていることはカメラの前でとてもよく見える。しかし実際は、いい給与を得るためにやっているんですよ」
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