2007年11月14日(水)
ハマスによる集会弾圧の続報
12日の事件(ハマスによる“アラファト追悼集会”への弾圧)に関してPCHR(パレスチナ人権センター)が出したプレス・リリースによって、さらに詳細が明らかになった。
式典が始まる午後1時の半時間ほど前、参加者たちが群をなして会場へ向かう道路を、自動小銃で武装した私服警官たちを乗せたジープが逆方向に走ってきた。それは会場へ向かうために道路を埋め尽くした群集に対する“挑発”だったと現場を目撃したPCHRのスタッフは証言している。参加者たちの中に、そのジープに向かって罵声を浴びせる者がいた。すると警官は直ちに発砲で応じた。この「衝突」で29歳の男性が死亡した。
次の「衝突」は私が目撃したあの現場の近くで起こった。集会参加者たちが、近くで警備する警官たちに向かって投石した。それに対して警官は実弾による銃撃で応じた。現場を撮影した写真や映像によって、警官が群集に無差別に銃撃する様子が撮影されている。
「朝日新聞」が報じるような「ファタハの支持者とイスラム過激派ハマスの治安部隊との間で銃撃戦」ではないことは、その犠牲者を見れば明らかだ。死亡者は6人で、その詳細をPCHRは以下のように報告している。
この犠牲者たち全員が集会参加者たちで、ハマス警官側には1人の犠牲者も出ていない。
一方、現場を取材していたジャーナリスト数人もハマス警官に攻撃されている。PCHRで把握できたケースだけでも、1人のカメラマンは警官に殴られカメラを破壊され没収された。2人目は拘束され、撮影したテープを没収された。3人目は拘束後、撮影した映像を抹消させられた。
事態はそれだけでは終らなかった。その日の夕方、デイルバラのヤヒヤ・サムラの葬儀のデモで、警備する警官に葬儀参加者たちが罵声を浴びせたために警官が発砲、さらに複数の負傷者を出した。
さらに、この日の夜、ハマス警察当局は、ガザ地区全域で大掛かりなファタハ活動家たちの捜索を行い、多くのメンバーを拘束した。
知人の話では、昨日の集会に集まった住民たちはファタハ支持者たちだけでなかったという。ハマス支配と現在のガザの状況に不満を持つ一般の住民が、その意思表示をするためにあの会場に押し寄せてきたというのだ。参加者を乗せる車が足りず、多くの参加者たちは10キロ以上も離れた地域から徒歩で会場へやってきたという。
ハマス当局は、これほどの群集が「アラファト追悼」と「反ハマス統治」で一堂に集まったことに“脅威”を覚えたにちがいない。彼らが一団となって、「ハマス政府」の中枢となる建物へ向かって押しかけたらという“脅威”が、ハマス警察のあの過剰な対応をとらせたと分析する知人もいる。
それにしてもこのハマス警察による“住民銃撃”事件は、ガザ地区住民の“ハマス観”の大きな転換、“反ハマスへの動き”の転機となる可能性をはらんでいるような予感がする。
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