2008年3月18日(火)
15日の「JVJAパレスチナ緊急報告─ガザ住民はなぜ封鎖・大量殺害されるのか」を思い立ったのは、その2週間前、3月1日だった。ほんの3日間ほどの間に100人近いパレスチナ人が命を奪われている状況を、長く“パレスチナ”と関わってきた者として座視しているわけにはいかない─ただそれだけの思いからだった。当初、参加者は2、30人でも構わないと考えていた。とにかくできるだけ早く実施すること、そのためにはまず会場を押さえなければならない。JVJAの報告会でいつもお世話になっている明治大学の生方卓教授に相談すると、彼はすぐに対応し、教室を押さえてくれた。「50人のほどの規模の教室を」と依頼したが、予約できるのは140人の教室だけ。少ない参加者でガラガラの会場になることが予想されたが、とにかく明大ほど地の利のいい会場はない。
当初、私独りででもやるつもりでいた。JVJAの仲間の古居さんはパレスチナへ取材に出るために準備中で、当日、日本にいるかどうかもわからなかった。他にガザの状況がわかるジャーナリスト(「朝日新聞」の川上泰徳・編集委員は作秋、ガザを取材した連載記事を掲載したが、昨年暮れ、川上氏に「パレスチナ記録の会」のガザ報告に登場していただいたばかりだった)も思いつかない。幸い私には、昨秋にガザを取材し、封鎖の実態やハマスの実情をまとめた映像があった(ドキュメンタリー映像「ガザはどうなっているのか」(第1部「封鎖の民衆」/第2部「ハマスと民衆」)。イスラエル軍のガザ攻撃のニュース映像と、私のその映像だけでも報告会は開けるという目算はあった。
しかしよく考えてみると、ガザのパレスチ人側の被害だけの報告では一面的過ぎる。やはりイスラエル側の行動の背景も同時に伝える必要がある。それができるのは、日本女子大学教授の臼杵陽氏だ。あいにく彼は報告会当日、海外出張中だという。ならば、ビデオ出演という手がある。報告会の1週間前、私は臼杵さんの研究室にカメラを持って出向き、1時間ほどインタビューした。「あれほどの攻撃をするイスラエル政府側の内情とイスラエル社会の空気と国民の心情」、「ハマスの問題点」、「ハマスやガザ地区の現状に対するアッバス政権およびヨルダン川西岸住民の反応」、さらに「日本は何ができるのか」などの質問事項に臼杵氏は答えてくれた。
他にもJVCの藤屋リカさんにも協力してもらえることになった。エルサレム事務所のスタッフが撮った写真などを元に、イスラエルの攻撃による被害の実態を報告してもらうことにした。また古居さんも取材出発を延期し、報告会に参加することが決った。彼女が昨年夏に取材したガザ地区の家族の様子と過去の映像と織り交ぜて報告することが決った。準備期間、2週間にしては、密度の濃い内容の報告会となった。
事件の状況を伝えるニュース番組の編集と翻訳、さらに会場で配布する資料作りは、「パレスチナ記録の会」のボランティア、横浜国大や東京外大の学生たちが担当してくれた。
報告会には予想以上に人が集まった。140人定員の会場が150人を超える参加者でぎっしりと埋まり、140部しか用意していなかった資料が足りなくなった。短い広報期間、しかも“パレスチ”という、日本人には「遠くて複雑な問題」と敬遠されがちなテーマの報告会に、これだけの人が集まったことに、企画者の私自身も正直、驚いた。テレビとりわけ民放のニュースではほとんど取上げられないパレスチナ情勢でも、やはり関心を持っている人はいるのだということを知り、励まされた。
私がこの報告会で強調したかったのは、今回の事態も、メディアのいうような「ハマス側のカッサム・ロケット弾による攻撃と、それに対するイスラエル側の空爆と侵攻による『報復』という『暴力の応酬』」ではないということだった。私はそれを、パレスチナ問題の構造と、「双方の攻撃力の段違いの差の見間違え」を図解した。
またこの事態を「パレスチナ人の被害」という視点からだけではなく、イスラエル側をこのような行動に駆り立てる背景を臼杵氏に語らせることによって、複眼的・立体的に浮き彫りにしたいと願った。
近々、この報告会での臼杵氏や私の発言の内容は近い将来、このコラムで紹介する。
今日は、まず私のドキュメンタリー映像「ガザはどうなっているのか」の内容を文章化したルポを掲載する。
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