2008年5月15日(木)
──【第2章】イスラエルは戦略上の“資産”か“負債”か?(続)
- もちろん、米国のイスラエル支援が反米主義の唯一の源ではない。だが重要な源だ。それは「テロとの戦争での勝利」と「他の米国の利益の促進」をより困難にしているのである。(P.129)
- 「アラブの人たちは米国のイスラエル支援に深い怒りを感じている。つまりこれを、アラブでの関心事に対する米国の鈍感さとみなしている。さらに米国が表明している価値観と矛盾していると見なしている」(政府調査と多くの世論調査の結論)(P.130)
- 「イスラム教徒はわれわれの自由を憎んでいるのではない。彼らはわれわれの政策を憎んでいるのだ」(国防総省防衛科学委員会)(P.130)
- 「この地域の大きな害毒は、イスラエルの支配政策とパレスチナに加えられた被害である。中東全域の人々はこの政策の不公平さを認識している。同時に米国がこの政策を支持していることが同じくらい不公平であることも認識している」(国連特使ビラヒミ)(P.131)
- 私たちの論点は「米国はイスラエルをこれほど一貫して支援することによってかなりの代償を払っている」ということだけだ。
- 要するにテロとの戦いの話になると、米国とイスラエルの利害は一致しないのである。パレスチナに敵対してイスラエルを後押しすることは、テロとの戦争の勝利を容易にではなく困難にしている。(P.132)
「“ならず者国家”に立ち向かう」
- 中東における米国の主たる戦略上の関心事は石油である。そして石油の権益を守れるかどうかは、どこかの国が単独でこの地域全体を支配しないよう防ぐことができるかどうかにかかっている。この懸念は、もしこれらの諸国の一つが強大になりすぎた攻撃的になりすぎた場合、それを攻撃することの理由になりえる。(P.133)
- イスラエルは周囲の危険な隣国に対処するための米国の重要な同盟国と想定されている。しかしそもそも米国がこれらの国々を脅威と見る大きな理由は、米国がイスラエルに関わることにある。実際に、「米国の政策がイスラエルへの関わりに束縛されなければ、これらの国々との間にある様々な紛争への取り組みはもっと楽になる」とわかるのではないだろうか。(P.135)
- むしろサダム・フセインの大量破壊兵器開発事業あるいはイランが目下抱いている核兵器保有の願望に対する米国の懸念は、主としてイスラエル向けと言われている脅威から起こったものなのだ。((P.135)
- イスラエルの隣国のいくつかが核兵器をほしがる理由の一つは、イスラエルが核兵器を保有しているからだ。(P.138)
- 米国によるイスラエル支援と、イスラエルによるパレスチナ人への抑圧の継続は一対になっており、このことが他の多くの地域で米国の評判を損なう原因になっている。(P.138)
- 「イスラエルによる占領を含めて、パレスチナ紛争を続けることはテロの新たな動きにつながることは確かである。つまり米国が非常に恐れる国際的なテロリズムがはこびるだろう」(イスラエル人従軍記者/ゼエブ・シフ)
- イスラエルを無条件で後押しすることによって、米国が過激派の標的になってしまう。ヨーロッパとアラブの同盟国を含めた第三者の目からは、米国が無神経で偽善的に見えてしまうのだ。米国はイスラエルとの戦略的協力の様々な活動から今でも利益を得ている。その収支を見ると、イスラエルは“資産”ではなく、“負債”なのだ。(P.140)
「疑わしい同盟国」
- 元国防次官で一貫してイスラエルの支持者であるダグラス・ファイスですら「イスラエルが、94年に中国に売却した無人飛行物体遠隔操作システムの性能向上に同意したときは怒った」という。
- ジョナサン・ポラードは、81年から85年の間に大量の極秘情報をイスラエルに提供した米国の情報分析官である。ポラードが逮捕された後で、イスラエルはボラードが何を提供したのかを米国に報告することを拒否した。ポラードの事件は氷山のほんとの一角にすぎない。86年に米国企業から偵察用カメラの技術を盗もうとした。米国の調停委員会は後にイスラエルを「不誠実で、不法で隠し立てのある行為」のため非難し、イスラエルに「レコン・オプティカル社に対して300万ドル(3億6000万円)の損害賠償を支払うよう」命じた。(P.142)
- 「われわれ諜報部門で働いていた者は、イスラエルを米国内で2番目に活発に活動している外国諜報機関であると長年見なしている」(元司法省国内治安部門長ジョン・デイヴィット)(P.143)
- ソ連が崩壊し、中東での超大国競争が終ると、この正当化のための理由も消えた。今日では、米国のイスラエルとの親密な関係、とくにイスラエルがどのような政策を採ろうと、イスラエルに嬉々として資金提供する姿勢は、米国をより安全かつ豊かにはしていない。反対にイスラエルへの無条件の支援は米国の他の同盟国との関係を台無しにし、米国の英知と人道的理想に疑いを投げかけている。これが反米過激派の世代を活気づかせ、危険に満ちた死活的に重要なこの地域における米国の対応を複雑なものにしている。(P.144)
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