Webコラム

日々の雑感 257:
飯舘村・除染の試み

2012年4月17日


「除染モデル実証事業の結果速報」より

 4月5日、ほぼ1カ月ぶりに飯舘村を訪ねた。知人の住民Kさんが村の北部、草野地区の自宅へ案内してくれた。この地区で昨年暮れから1月にかけて独立行政法人「日本原子力研究開発機構」によって、「除染モデル実証事業」が行われた。ある一定の地域を、高圧洗浄や洗浄剤を用いた洗浄、舗装の撤去・再舗装などで除染をやって、どのくらい効果があるかを試みる事業である。Kさんの自宅を含むモデル地区の面積は400メートル四方、その除染にかかる費用は6億円だという。
 では6億円をかけた除染事業で線量はどれほど下がったのか。Kさんが線量計を出し、地上1メートルほどで測ると2~2.5マイクロ・シーベルト/時。除染前からほぼ半減したという。「日本原子力研究開発機構」が出した「結果速報」では、庭で下草刈りや表土剥ぎ取りなどで除染作業をやった結果、空間線量は4.34マイクロ・シーベルト/時から2.34マイクロ・シーベルト/時に、つまり低減率は45%だった。また表面線量は6.56マイクロ・シーベルト/時から4.35マイクロ・シーベルト/時になり、低減率は34%に過ぎないことが判明した。つまり除染作業をやっても、政府が住民の帰還の基準と考えている20ミリシーベルト/年前後の線量が残る地区であることに変わりはないことになる。

 「こんな線量の中で不安を抱え、ましてや孫や子どもを近づけることもできない家には帰れない」とKさんは言う。「400メートル四方で6億円もかけていったい何人の村人が帰るか疑問です。どんなに金をかけても戻れる線量にはならないんですから。それなら、むしろ避難した村人の生活のための資金に活用したほうがもっと有効ではないでしょうか」

 菅野典雄・飯舘村村長は「除染をして数年のうちに村人を還す」と方針から一歩も引こうとはしない。それに対して、Kさんのような声は避難した村民の中に少なくない。今、飯舘村では、村長を中心とした村の行政側と、避難した村民たちとの間に、除染や村への帰還をめぐって埋めようもないほどの大きな乖離と不信が生まれている。

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