Webコラム

日々の雑感 357:
日本人は“アレッポ”とどう向き合うのか

2016年12月15日(木)

 今、シリアのアレッポがロシアとシリア政府軍に制圧され、これまでわかっただけでも82人の住民の虐殺が国連によって報じられている。実数はもっと多いだろうし、これからさらに増えていくだろう。しかし日本のメディアは、どうしてこうも冷淡なのだろう。カジノ法案の成立も重要なニュースだろう。プーチン大統領の訪日で北方領土問題がどうなるか、日本にとって重要なニュースだろう。しかし何百人、何千人、何万人という一般市民が虐殺の危機にあるなか、なぜ日本のメディアは騒がないのだろう。ここに日本人が1人でもいたら、大騒ぎし、「アレッポ問題」ではなく、「日本人虐殺事件」としてトップニュースになるだろう。日本人の命とは、シリア住民の命より何千倍も重いのか。フクシマの後も原発の再稼働を急ぎ輸出さえしようとする、またあれほどパレスチナ人を占領で抑圧するイスラエルとも経済関係強化しか頭にない安倍首相が、訪日したプーチン大統領に「アレッポでの住民の状況を遺憾に思う。人道的な対応をぜひお願いしたい」と言及することを期待するのは、太陽が西から昇ることを期待するのと同じくらい愚かなことかもしれないが、少なくとも記者会見で日本人ジャーナリストの中から、「アレッポで住民虐殺が起こっているという報道をどう受け止めているのか。住民虐殺を阻止しようとしないのか?」とプーチン氏に質問するくらいの気骨のある記者が現れることを期待するのも、やはり無理だろうか。「日本の読者や視聴者は関心が薄いから」と言い訳をして、同時代に地球上の裏でまさに虐殺が起ころうしていることを、真っ先に伝えようとしない日本のメディアの姿勢を見て、メディアが「日本人の国際感覚」を育てることを期待するのは、やはり「ないものねだり」なのだろうかと思ってしまう。
 「人の死を数で数えてわかったつもりになるのではなく、一人ひとりの人間の“痛み”を伝えるジャーナリストでありたい」と改めて思う。
(12月15日・パリにて)

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