【出版のお知らせ】
『沈黙を破る─元イスラエル軍将兵が語る“占領”─』
(2008年5月9日 岩波書店)
本書は、元イスラエル軍将兵たちが占領地の自らの体験と内面の葛藤、イスラエル社会への影響を語るインタビュー集を中心にし、イスラエル側から見た“占領”の実態を描き、さらに旧日本軍将兵たちとの共通点と相違点を模索したものです。
私にとって、本書の完成は2つの大きな意味があります。
1つは、この23年間、私が取材し伝え続けてきた“被害者”パレスチナ人側の視点からの“占領”に、“加害者”側の証言が加わることで、“占領”の実態がより立体的・重層的になり、かつ実証的に見えてきたこと。
もう1つは、「なぜ日本人の自分が、遠いパレスチナ・イスラエルの問題を追い続けるのか」という、長年私の中にずっとつかえていた問いに、本書によって初めて具体的な答えの一部を提示できたことです。
私のライフワークとなった“パレスチナ”と、学生時代からのもう1つのテーマだった“日本の加害歴史”との接点の一端を、本書によってやっと見出すことができたという思いです。
元イスラエル軍将兵の証言を通し“侵略・占領する側”の実像を見つめることで、その“鏡”に、かつて侵略者で占領者であった日本の過去と現在の“自画像”を映し出し、私たち日本人自身のあり方を見つめなおすことを促すような本にしたいと願い、書き上げました。
なお現在、制作中のパレスチナ記録映像シリーズ全4作品『届かぬ声─占領と生きる人びと─』(仮題)の第4部『沈黙を破る─元イスラエル軍将兵が語る占領─』(仮題)の後半は、本書の内容を映像化したものです。
企画を思い立ってから4年、取材と執筆に足掛け3年を要しました。ジャーナリストとして“パレスチナ”と関わって23年になる私の模索の一到達点といえるかもしれません。
ぜひお読みいただき、率直なご批評をいただければ幸いです。
2008年5月9日 土井敏邦
関連ページ:拙著『沈黙を破る』を出版に寄せて・「あとがき」から
パレスチナ自治区の占領地で日常的に繰り返される暴力や殺戮。イスラエルでは多くの兵士が占領地での任務に就くが、今までその実態が語られることはなかった。自らの加害体験を社会に伝えるために結成された青年退役兵たちのグループ「沈黙を破る」へのインタビューを通して、「占領」の本質を浮き彫りにする。