Webコラム

日々の雑感 377:
誕生日メッセージのお礼

2019年1月9日

 66歳の誕生日の昨日、たくさんの方々から「お祝いのメッセージ」をいただきました。光栄です。ありがとうございました。
 会社など組織で働いてきた私の中学、高校の同級生たちはすでに定年退職し、余生を孫たちと楽しんでいる者も少なくないはずです。しかしフリージャーナリストの私には「定年」はありません。とりわけ青年時代にたくさん挫折し人生を回り道してきた私はジャーナリストとしてのスタートが遅かったため、他の人より1年でも長生きして、遅れ分を取り戻さなければと自分に言い聞かせています。
  昨年は初めて体内にがんを抱え込んでしまって動揺しましたが、幸い患部を全摘出できて転移もなく胸をなでおろしました。しかし,いつ何が起きてもおかしくない年齢になったことを痛感させられました。
 やるべき仕事をやり遂げるためにきちんと健康管理をして“持ち時間”を一時でも延ばさなければと、「山歩き」を始めました。「登山」と呼べるほど高く険しい山ではなく、早朝から出発して昼頃には帰れるほどの小山です。それでも「ゼーゼー」と喘ぎながら一歩ずつ足を進め、やっと山頂にたどり着く時の達成感と爽快さはなんとも言えません。
 「山歩き」を初めて、月並みで、すでに昔から言い古されたことですが、2つの“人生訓”を実感しました。
 一つはベテラン登山者が登る山の高さやスピードと自分を比べ、劣等感に悩む必要はなく、自分の能力で登れる山を自分のスピードで精いっぱい登ればいいのだということです。能力の乏しい自分が巨匠たちの仕事と比べて落胆するのではなく、人ぞれぞれ持って生まれた能力の大きさや種類は違うのだから、自分に与えられた小さな能力を精いっぱい生かしきればいいのだ、ということを改めて痛感しています。
 二つ目は、どんなに高く険しく見える山も、足を一歩ずつ前に進めていれば、いつかきっと山頂にたどり着くということです。休み休みしながらも、一歩一歩足を前に進めるように仕事をやり続ければ、きっと何かを成し遂げられる、そう信じて少しずつでも仕事を弛まず、やり続けること。私はいま、そう自分に言い聞かせて、亀のように歩き続けようと思っています。

 今年3月から、4年がかりで取材・撮影・編集を続けてきた証言ドキュメンタリー映画『福島は語る』を全国で劇場公開します。また一昨年から少しずつ編集作業を続けてきた『アミラ・ハス―イスラエル人記者が語る“占領”―』DVDを完成します。
 さらにこの数年パレスチナに通い続けて取材し完成したドキュメンタリー映画3部作『ヨルダン川西岸』の自主上映も開始します。一方で、昨年夏に取材した「東エルサレム」も編集作業にかからなければなりません。貧困と絶望に喘ぐガザ地区の状況も伝えなければなりません。
 “持ち時間”で間に合うのかと不安ですが、とにかく“一歩ずつ”です。

2019年1月9日 土井敏邦

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