【写真・雪の津島を撮影する土井(22年12月)/撮影・土井幸美】
2023年1月8日
今日(1月8日)、私は70歳になりました。私は以前から、「60代までは“おじさん”。70歳からは“おじいさん”」とイメージを抱いていました。その「おじいさん」に私自身がなったのです。私の人生の大きな節目です。
身体が弱くて、顔色も青白く、やせ細っていた少年時代の私は、10歳年上の兄(今も健在)から「お前は30まで生きらんぞ」とよく言われました。その私が70歳の「おじいさん」になったのです。
高校時代の同級生から、同じクラスにいた2人が最近、同じくすい臓がんで他界したことを知らされ、衝撃を受けました。私も数年前、大腸がんの手術を受けた経験もあり、改めて「70歳まで、よくぞ生き延びてきたなあ」と感無量です。
私は60代後半になってから、「誕生日おめでとう」と言われるたびに、「誕生日は『寿命がまた1年短くなったぞ!』という宣言の日なのに、何がおめでたいんだろう」と思ってきました。しかし今年は、誕生日に少し違った見方をするようになりました。
70歳になった今も“ドキュメンタリスト”として活動を続けていられるのは、周囲の人たちによって支えられてきたからだと、今、改めて自覚せざるをえません。
22年前に他界した母は、50歳近くになっても定職にも就けず、家族も持てない私を嘆き、「どうか人並みになってくれ!」と懇願し続けていました。若い時から母から言われ続けてきた「人並みなか(でない)」という言葉は、私の意識の底に重い鉛のように残り続け、私の根深い“劣等感”をかたち作りました。
そんな私が50歳のなったときに、「人並みなか」自分を“拾って”くれたのが今の連れ合いです。14歳も年下の彼女は、20年間、献身的に私を物心両面で支えてくれました。私の若い頃を知っている旧友たちは、「土井君は結婚してから、映画を作り始め、やっと残る仕事ができるようになった。全部、奥さんのお陰だよ」と口を揃えて言います。その通りです。彼女がいなかったら、私がこれまで公開した20本近いドキュメンタリー映画(劇場公開した映画とDVD化して販売している映画)は存在しなかっただろうと思います。
連れ合いだけではありません。私は今までたくさんの人に支えられて生きてきましたし、今もそうです。
ネット音痴の私のHPを立ち上げ、もう18年、更新・管理してくれているAさん、パソコンやSNSに疎い私が映像編集ソフトの操作に行き詰ったとき、いつも快くアドバイス・指導をしてくれるOさん、私の映画の国内外へのネット配信を一手に引き受けてくれているHさん、そして私が撮影する膨大なインタビューの文字起こしを手伝ってくれる多く人たち……、彼らはみな、ほぼボランティアです。
私は独りでドキュメンタリー映画を作り発表しているわけではありません。たくさんの人に支えられて活動し、“生きて”きました。いや“生かされて”きました。
70歳という大きな節目に、「よくぞ70年も生きてこられたものだ」とつくづく思います。そして私の“生”を支えてくれた人たち、そして今も支えてくれている人たちに、誕生日に改めて心から伝えたいと思います。
「こんな私を“生かして”くれてありがとう」
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