土井敏邦 ドキュメンタリー映画『愛国の告白 沈黙を破るPart2』公式サイト

2022年11月19日から
東京 新宿 K's Cinema で公開
ほか全国順次公開予定

パレスチナ取材暦34年
土井敏邦監督による集大成

1985年以来、34年間現地に通い“パレスチナ・イスラエル”を取材、これまでガザ地区、ヨルダン川西岸、東エルサレムなどパレスチナ人地区とイスラエルについて多数の著書・ドキュメンタリー映像を発表し、報道してきた。

本作『愛国の告白 ─沈黙を破るPart2─』は2009年に国内で劇場公開し、さまざまな映画賞を受賞した長編デビュー作『沈黙を破る』の続編、土井敏邦監督の34年におよぶパレスチナ・イスラエル報道の集大成となる作品である。

「裏切り者」と呼ばれても伝えたいもうひとつの真実

“占領軍”となった若いイスラエル兵たちが、パレスチナ人住民に絶大な権力を行使する兵役の中で道徳心・倫理観を麻痺させ、それがやがてイスラエル社会のモラルも崩壊するという危機感を抱く。その元将兵たちは、“占領”を告発するNGO「沈黙を破る」を立ち上げる。前作『沈黙を破る』(2009年公開)では、そんな若者たちの姿と証言、そして占領地の凄まじい実態を描いた。

あれから13年、イスラエルは一層右傾化し、占領と武力攻撃はさらに強化されている。

その情勢の中で、「沈黙を破る」の活動は、イスラエル社会でさらに重要な存在意味と役割を持つようになった。それに従い、政府や右派勢力からの攻撃も急激に強まっていく。それでも彼らは屈せず、活動を続ける。

これは私たちにとって「遠い問題」ではない。“自国の加害”と真摯に向き合う「沈黙を破る」の元将兵たちの凛とした生き方は、私たち日本人に「“自国の加害”と、あなたはどう向き合っているのか」と問いかけている。

ユダ・シャウール(創設者)
「イスラエルの安全と安定を考えるとき、何百万人ものパレスチナ人の喉を踏みながらイスラエルの安全と安定と平和を得られると考えるなら、正気ではありません」


アブネル・グバルヤフ(代表)
「私は結局、大きなシステムの車の歯車の一つなのです。『自分は良い兵士だった』などの問題ではない。システムの中では私の意図などどうでもいいことなのです」


アヒヤ・シャッツ(渉外責任者)
「ハンマーを持って外の世界を歩き回る時、すぐに打つ釘を探すのです。血に飢えた兵士になるんです。それが『優秀な兵士』なのです。“モラル(倫理)の退廃”です」


フリマ・ブビス(西岸で兵役)
「問題は、私たちイスラエル人のことでないのです。何百万人ものパレスチナ人には私たちが持つ基本的な権利がないことです。それが私たちを突き動かしています」

土井敏邦監督より

2009年に映画『沈黙を破る』を劇場公開して13年、その続編『愛国の告白 ―沈黙を破る・Part2―』が完成し、11月から劇場公開します。

この映画は、NGO「沈黙を破る」のスタッフたちへのインタビューを土台に、2001年以降、約20年にわたって私がパレスチナのヨルダン川西岸、ガザ地区で撮影・記録を続けてきた映像を織り交ぜながら、3年がかりで編集した作品です。

前作からの13年間、パレスチナ人地区のヨルダン川西岸や東エルサレムでは、ユダヤ人入植地の拡大が加速し、“イスラエル化”が急速に進行しています。一方、ガザ地区では長い“封鎖”のために経済は破綻、繰り返されるイスラエル軍によるガザ攻撃で多くの死傷者を出し、住居などインフラが破壊されてきました。将来が見えず絶望の淵に追い込まれた住民とりわけ若者たちの中には、ガザからの脱出者、さらに自殺者が続出しています。

そのなかで、“占領”をイスラエル国内外で告発し続ける元イスラエル軍将兵たちのグループ、「沈黙を破る」の活動は、さらに重要な役割と存在意味を持つようになりました。それに従って、政府や右派勢力による圧力と弾圧は一層激しくなり、組織の存続、さらにスタッフの身の安全さえ脅かされるまでになっています。

本作品では、「沈黙を破る」の活動を続ける元将兵たちが、「裏切り者」「敵のスパイ」という非難・攻撃のなかで、どのように自分自身を支え、信念を貫いていくか、という新しいテーマも描いています。

一方、「沈黙を破る」の若者たちの言動は、私たちに「愛国とは何か」という問いを投げかけています。「自国の加害と真摯に向き合い、それを告発し、是正しようとする」こと、「自国と国民がモラル(倫理・道徳)を崩壊させてしまうことへの危機感から声を上げ行動を起こす」行為は、「祖国への裏切り」なのか。むしろそれこそが真の“愛国”ではないのか。映画のタイトルを「愛国の告白」としたのは、そういう思いからです。

それは翻って、日本社会への問いかけでもあります。「沈黙を破る」の若者たちを「裏切り者」と非難・攻撃するイスラエルの為政者たちや右派勢力は、自国の“負の歴史”を覆い隠し、「輝かしい歴史」を拾い集めて「この『美しい日本』を誇れ!愛せ!」と声高に叫び、報道や教育現場に強い圧力を加える日本の為政者たちや保守勢力と重なって見えないでしょうか。

さらにこの映画の元将兵たちの告白は、かつて中国をはじめアジア諸国に侵略し、“占領軍”となった旧日本軍の兵士たちが、なぜあれほどの残虐行為を犯してしまったのか、そして現在、ウクライナに侵略したロシア兵たちがブチャ虐殺に象徴されるような犯罪をなぜ起こしてしまうのか、“占領軍”兵士の深層心理を探る一つの手掛かりを暗示しています。

この映画は「遠いパレスチナ・イスラエル」の物語に終わりません。私たちの国の社会の在り方、また私たち自身の生き方をも映し出す映画です。

ぜひご覧ください。

監督プロフィール

土井 敏邦(どい としくに)
1953年佐賀県生まれ。ジャーナリスト。
1985年以来、パレスチナをはじめ各地を取材。1993年よりビデオ・ジャーナリストとしての活動も開始し、パレスチナやアジアに関するドキュメンタリーを制作、テレビ各局で放映される。2005年に『ファルージャ 2004年4月』、2009年には『届かぬ声―パレスチナ・占領と生きる人びと』全4部作を完成、その第4部『沈黙を破る』は劇場公開され、2009年度キネマ旬報ベスト・テンの文化映画部門で第1位、石橋湛山記念・早稲田ジャーナリズム大賞を受賞。次作となった『“私”を生きる』(2010年)は、2012年度キネマ旬報ベスト・テン文化映画部門で第2位。

東日本大震災後に制作された中編『飯舘村 第一章・故郷を追われる村人たち』(2012年)では「ゆふいん文化・記録映画祭・第5回松川賞」を受賞。また、2012年には、ビルマ(ミャンマー)から政治難民として日本に渡った青年を14年にわたって見つめた『異国に生きる 日本の中のビルマ人』で2013年度キネマ旬報文化映画第3位、文化庁映画賞文化記録映画優秀賞受賞。その他に『飯舘村 放射能帰村』(2013)、『ガザに生きる』全5部作(2014)など。著書は『アメリカのユダヤ人』、『沈黙を破る─元イスラエル軍将兵が語る“占領”─』(いずれも岩波書店)など多数。

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コメント

渡辺えり

女優・劇作家

ほんとに観るのがつらい映画だ。しかし、今だからこそ観なければならないドキュメンタリーだ。土井敏邦さんの作品を見ていつも思うのは「正義とはなんなのか?」という根源的なことだ。そしてこの映画の凄いところは、イスラエル軍の兵士たちをも「単なる加害者」ではないと伝えている所である。彼らが人間として苦悩し、自分に問いかける感情がはっきりとこちらに伝わってくる。

金平茂紀

ジャーナリスト

これはパレスチナに対するイスラエルの軍事占領、支配、暴力の物語であるばかりか、ロシア軍に侵攻されているウクライナの物語でもあり、さらにプーチンのロシアにおいて、反戦・非戦の声をあげている人々をめぐる物語でもあり、世界の各地で起こっている国家の暴力による領土獲得という普遍的な問題についての物語であるということだ。さらにここが最も重要な点なのだが、私たち日本で起きている過去の歴史の抹消、修正、改ざんの物語でもあるということだ。

野田正彰

精神科医・ノンフィクション作家

入植者に蝕まれているパレスチナ人の土地を案内する彼らには、内にこもった攻撃性も、欺瞞を隠す気取りも、現状を容認して体制に適応する卑屈さもない。加害者の側に、これほど理知的な青年たちの運動が生まれたのである。政治状況のために、イスラエル国内で観ることが難しいこの映画を、私たちは観ることができる。この映画との出会いを大切にしたい。

川上泰徳

中東ジャーナリスト

政治や政府と対抗することは「沈黙を破る」グループが求めたものではい。健全な社会を求めるグループの活動が、増え続ける入植地建設、繰り返されるガザ攻撃での無差別空爆など、国際法に反する自国の“加害”を目の当たりにして、グループは政治や政府と対抗して、パレスチナとの関係を模索しなければならなくなった。「愛国の告白」が描く“(前作「沈黙を破る」から)13年後”の現実は、イスラエル政府自身が国と国民の安全と平和を脅かしているという現在のイスラエルの状況を反映している。

作品データ

愛国の告白
─沈黙を破るPart2─

監督・撮影・編集・製作:土井敏邦

2022年/日本/カラー

上映時間:170分(劇場版)
(第1部 100分/第2部 70分)

チラシ/Webサイト冒頭・末尾写真:古居みずえ

参考:前作『沈黙を破る

上映情報

東京
新宿 K’s Cinema
2022年11月19日〜終了未定

ほか全国順次公開予定